国本泰英 Yasuhide Kunimoto

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自身の生活を取り囲む情景や、インターネット、雑誌などで得た様々なイメージの中から人を捉え、人を描くアーティスト・国本泰英。
「個」として存在する人は、時に群れとなって固有の要素を削ぎ落とされ、フラットな「人」へと変移していく。そんな曖昧な存在としての「人」に焦点を当てて描かれたアート作品をご紹介します。

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Interview
国本泰英さんにお話しをお伺いしました。

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― 絵を始めたきっかけは夢中になったアニメから

幼少の頃から、周りの大人たちから「ヤスくんは絵が上手だね。」と言われていたようで、なんとなく自分でもその気になっていたとは思います。小学3年生くらいのときにドラゴンボールに夢中で。でもあるとき、こんなに人気の漫画もいつか終わっちゃうのかと思ったらすごく切なくなってしまったんです。そうならないためには「そうか!僕が描き続けたら良いのだ!」とひらめいた(笑)。そこから練習をして、何人ものキャラクターを何も見ずに描けるようになりました。そうなるとクラスメイトに、あれ描いてこれ描いてと色々頼まれるようになったんですね。今思えばそれが「絵を描くことを仕事にしたい。」と思った最初のきっかけだったと思います。

校内のスケッチ大会などでがんばっている様子を見ていた担任教師の勧めもあり、親が絵画教室に通わせてくれました。その絵画教室に行ってみると自宅で見ていた漫画本の絵とは違う、巨匠たちの画集を目にして「こういう人たちもいるんだ。」と、それまで知らなかった世界を覗いた感じがしました。今までは色鉛筆とかクレヨンとか水彩絵の具でしか描いていなかったところに、油絵の具で描く楽しさや難しさも知りました。作家についてちゃんと理解はしていなかったけれど、小学5年生の頃には「ゴッホみたいになりたい!」というようなことを漠然と思っていましたね。

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― 描きたいものに焦点を絞って

大学でもごく自然に芸術学部を専攻し、作家活動をするにあたって自分はどんな表現でいくのか、合っているのかなどを試すことに終始しました。

大学を卒業後、実家に戻って小さな町での暮らしが始まりました。まずは、いつも目にしている近所の風景から、「山並み」や「電柱」などを題材にして描き始めました。描きたいものに焦点を絞って、その背景などを省略する画風は現在の作品にも通じています。

最初はそのような作品を展覧会などで発表していたのですが、だんだんと「これは自分が取り組むべき題材なのだろうか。」と疑うようになってきて。ではこの先、何を描けばいいのだろうかと考える時期が続きました。

そんなとき、たまたま登山のイベントに参加する機会があり、20人くらいで山に登りました。その日は自分の2人先くらいまでしか見えないくらい天候の良くない日で、皆で列を作り登りながら、霞んでいて詳細は見えないけれど確かにそこに人が存在している感覚がありました。霞みの中に人のシルエットだけが浮かんで見えて、その形が綺麗だなと思って惹かれました。そのときに「次は『人』を題材にしてみよう。」と思ったんです。

ですが、その後実際に描いてみようとなったときに「あれ、どんなだったっけ?」と、山で目にした人の映像がより曖昧になって、印象だけが残るような状態になっていたんです。結局輪郭や細部は思い出せないまま、印象だけを頼りに絵にしていきました。思い出せないので着ている服装や表情などは描きこまず、グラデーションをかけてごまかしたような絵になりました。現在取り組んでいる表現の始まりはこんな感じです。

初めはひとつの画面に一人、と描き始めていきました。キャンバスが大きくなるにつれて、絵に登場する人の数も増えていきました。登場人物たちの「個」は積みあがっていくのだろうと思っていたのですが、実際やってみると逆で、どんどん「個」が薄まっていくように感じました。この感覚の表現も、主題のひとつにしています。

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― 新しいことへのチャレンジ

2015年に大分県別府市にある温泉旅館「ホテルニューツルタ」の外壁に、壁画を描かせていただきました。アトリエでひとりキャンバスに向かって描いている孤独な状態とは全く違って、制作にかかった約2か月半社会と繋がりっぱなしというか、そんな経験は自分にとって初めてのことでとても新鮮でした。壁に向かって路上で制作していると、当たり前ですが、準備しているところも描いているところもさぼっているところも、いつもはひとりでやっていることを全て見られてしまいます。少し恥ずかしく感じながらも、毎日通る人がそれを見ていて「ここにオレのことも描いてよ。」と声を掛けてくれたり、逆になんとなく疎ましく思われているなと思ったり、そのあいだに季節が変化しているのにも気づいたり。そんな毎日で、人や天気やその他様々なものに影響を受けながら描き進めていきました。壁画に限りませんが、その時のように外と繋がっている状態や、コミュニケーションがある中で作品をつくれるような機会があれば、積極的に取り組んで行きたいと思っています。

国本泰英のアート作品

Profile

国本泰英 Yasuhide Kunimoto プロフィール画像

国本泰英 Yasuhide Kunimoto

1984
大分県出身
2006
九州産業大学芸術学部美術学科絵画コース卒
大分県在住

自身の生活を取り囲む情景や、インターネット、雑誌などで得た様々なイメージの中から人を捉え、描いています。
連なる行列、行き交う交差点、広場。そこでの私たちはいつも群像の一員です。「個」としてここにいる私は、時に群れとなって声や癖、表情、そんな固有の要素を削ぎ落とされ、フラットな「人」へと変移していく。私たちはそんな「個」と何物でもない「何か」との間を往還する存在だと思う。
そんな曖昧な存在としての「人」に関心があり、焦点を当てて制作しています。