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村上伊万里 イメージ画像

村上伊万里(むらかみいまり)の草花の愛らしいコサージュ。
胸元やバッグに飾れば、本物の草花をあしらっているような雰囲気です。

布地からひとつひとつ丁寧に作られるやさしくも緻密なコサージュは、使わない時も飾って楽しめる植物図鑑のようです。

 村上伊万里 インタビュー

文化服装学院では、服飾に興味を持ち、帽子・靴・バッグ・ジュエリーなどを学ぶファッション工芸科に進みました。
その中で「アートフラワー技術」を選択し、そこで帽子の付属や装飾としてコサージュ作りの基礎を学びました。
コサージュは、ハレの日に身に着けるイメージが強く普段の装いのイメージがないため、身近な存在ではなかったと思いますが、学ぶ中でコサージュ作りに魅せられていきました。

卒業後に、アパレルの装飾部分の造花製作を請け負うアトリエ染花に勤めました。 主に指示書にしたがってひたすら作る仕事でしたが、そこで様々な素材に出会い、製作し、学校で学んだ以上の技術を覚えることができました。
より雰囲気のあるもの、存在感のあるものを作る工程に携わることができ、私の中で「造花」のイメージが変わりました。

知人の紹介で青山にある個人経営のお店のオーナーさんに「うちのお店のためにコサージュを作って欲しい。」と言われ、自身の作品を扱ってもらったのが最初です。 それを出版社の編集者さんが目に留めてくださって。書籍(「ふだん着のコサージュ」2006年)を出したら、そこから「作家」という肩書がついた、という感じです。

作家として初めての個展が、spiral market selectionのvol.141(2008年)でした。 spiral market selectionは、面積も広いですし、どうやってそこに小さなコサージュを展示していこうかとずいぶん考えました。その時に標本のように見せたらどうだろうと。
花は花だけれどデフォルメされた何の花かまでは分からないようなものがコサージュには多いのですが、そういった漠然とした花ではなく、もっと花や草の名前が限定されるような具体的なコサージュを作ってみたいなと思いました。

私自身、昔から植物図鑑を見るのが好きだったので、まさに植物図鑑から出てきた草花が並んでいるような展示をしたかったんです。 この時の展示で、以降の私の作風として確立されたと思います。

制作では、既存の色生地でそれぞれのパーツを作成し、それを組み上げてひとつの作品に仕上げています。
私が作るコサージュは、図鑑に描かれていた植物がそこから抜き出てきたようなものにしたかったので、すでに染色されている綿や麻の生地を常にストックしておき、その中から植物の花びらや花芯、葉の表、葉の裏などに一番ぴったりなものを選んで使っています。 綿と麻で質感が異なるのはもちろんですが、同じ綿でも布目が荒くざらっとしているものや細かくつるっとしているものでも表情が違うので、それらを用いて花の外側や内側、葉の表裏などをよりリアルに表現したいと思っています。

アートフラワーでよく用いられるサテンやオーガンジーは、普段の装いからは身近ではない気がするので、より普段着に合うように綿麻を主に使用しています。 本物の草花が美しく可愛らしいから、それを超えることできないけれど、生地によって可憐さや力強さみたいなものを表現していきたいと思っています。

造花製作の仕事と並行して、ひびのこづえさんのアトリエスタッフとして衣装制作もしていました。
ひびのこづえさんが作る洋服・作品が好きで「こづえさんのところで仕事をさせてください。」と何回か、手紙を送ったことがありました。 その時点では採用枠がなかったのですが、しばらくして、スパイラルでこづえさんの展示(2005年)が行われることになり、その会場スタッフをしてくれないかと声を掛けて頂いきました。
それがきっかけで展示会終了後、アトリエでの制作に携わることができるようになりました。日中は造花製作の仕事して、夕方から終電までこづえさんのアトリエで制作…というハードな日々を送っていました。 体力的には大変でしたが、素晴らしい経験が両方ともにあったから苦にはなりませんでした。

ひびのこづえさんのアトリエで学んだことは「妥協しないものづくり」です。どんなに納期が限られていてもギリギリまで、もっと良くできないかと細部にまでこだわって制作をする空気がアトリエにはありました。
でも、こづえさんの作品が発する空気はどれも軽やかだし、それを見たり身に着けたりするときはとても楽しいですよね。これからもそういうバランス感覚でものづくりをしていきたいと思っています。

村上伊万里のコサージュ

適度な厚みとハリを持たせるため、生地を何枚か重ねて貼り合わせ、丸くカットした後に花びらの形に切り出す。蒲公英の花びらは外側用に大きく、内側用に小さく作る。

刺繍糸を左右に何往復かさせて束を作り、束の中心をワイヤーで縛り両端をカットすると、フサフサの花芯ができる。

コテを使って花びらのスジとカーブをつけて花びらを立体的に。花芯のワイヤーに花びらの小、大を通してノリ入れ。花が完成。

花と同じ工程で葉の生地をカットし、ワイヤーを挟んで、もう一度生地を貼り合わせ、葉の形に切り出す。葉のフチからベージュが見えることで、より複雑でリアルな色合いが出る。

コテで葉脈となるスジをつけ立体感を出し、花と葉のワイヤーを束ね、ワイヤー全体をグリーンの生地で巻き、茎に。

花と葉の位置を整えてできあがり。裏側も美しく。

村上伊万里 むらかみいまり

文化服装学院ファッション工芸科卒業。アトリエ染花、ひびのこづえ事務所での制作経験を経て独立。
コサージュを始め、コットンや麻の布地を使用し、植物を模したアクセサリーを制作。

著書:「ふだん着のコサージュ リネンのばらから松ぼっくりまで」、「小さな草花、1本のコサージュ」

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