浦佐和子 Sawako Ura

浦佐和子 Sawako Ura テキスタイルイメージ

フィンランドのヘルシンキで、フリーランスのテキスタイルデザイナーとして活動する、浦佐和子。 自然の美と記憶の中の風景を創作テーマに描かれた作品は、Marimekko(マリメッコ)、Samuji(サムイ)、kokka(コッカ)などにデザイン提供され、暮らしを彩る数々のテキスタイルプロダクトになっています。

ファブリックアイテムはこちら インタビュー記事はこちら

「植物たちの春の芽吹き」に想いを馳せて描かれたデザイン

浦佐和子 Sawako Ura「Versoa SAWAKO URA EXHIBITION」個展風景

2018年2月にスパイラル1Fの「MINA-TO」で開催された浦佐和子の原画展『Versoa SAWAKO URA EXHIBITION』に合わせ描き下ろされた2種類の新作ファブリック「Vehnä(ベフナ) 麦」と「Sammal kukkii(サンマル クッキイ) 苔の花」。

まだ寒いこの時期に少しでも春を伝えられたら、と思って描いたものです。フィンランドの冬は本当に、暗く寒くどんよりした長い冬。それが4月頃まで続きます。
少しでも明るく前向きな気持ちを感じることができるよう、「植物たちの春の芽吹き」に想いを馳せて描きました。


浦佐和子 Sawako Ura 「Vehna 麦」ファブリックイメージ

「Vehnä 麦」

フィンランドには麦畑が多く、人々にとっては馴染みのある存在。国の農産物でもあり、豊かな穀物をもたらしてくれます。そんな実りのイメージ、豊かな象徴として描きました。

浦佐和子 Sawako Ura「sammal kukkii 苔の花」ファブリックイメージ

「Sammal kukkii 苔の花」

フィンランドは湿地帯や湖が多く、森の苔がたくさん自生しています。日本の苔のイメージが持つじめっとしたものではなく、空気を含んだ、ふかふか・ふわふわとしたようなかんじです。そういう場所に花が咲くと綺麗だろうなぁと、ポンポンと花が咲いて苔が繁殖していくようなイメージで、暖かさを表現しました。


アイテム紹介

浦佐和子 Interview

浦佐和子 Sawako Ura フィンランドの美しい自然

--- フィンランドの自然の美しさが作品のテーマ

私自身は東京で生まれ育ったので、それまではあまり自然には馴染みがありませんでした。フィンランドで、少し行けばすぐに豊かな森や湖があるという環境に初めは衝撃さえ受けました。 そこに美しい色が溢れている、という感じです。特に雪や冬の季節が終わった夏の光・空・緑…の色は本当に穏やかで綺麗です。

フィンランドで生活し創作をしていきたいと思うようになって、自然の美しさが作品テーマになっていきました。 色を取り入れたり組み合わせたりという表現は元々好きだったということもあって、それが自分のやっていきたいテーマに上手くはまったかんじです。

--- フィンランドでの生活と制作

クレヨンを塗り重ねて層を作り、その上を楊枝のような先の細いもので削って点や線を描いていくスクラッチの手法で制作しています。

以前と比べ、色使いは変わったと思います。窓から見える空が日によっても時刻によっても毎日違います。日本でもそれは同じだとは思いますが、私自身はそれをあまり意識的に見ていませんでした。 何よりフィンランドの気候はダイナミックに変わります。夏は朝3時くらいからすでに明るくて夜11時くらいにやっと夕方、というような明るさ。冬はその逆で、朝の10時くらいまで暗く午後2時くらいにはもう日が落ちる。 だからでしょうか、空の明るさや浮かび上がる景色の色にとても敏感になったような気がします。

短い夏のあいだは、家の中にいるのがもったいなくて制作よりも外に出て自然に触れていることが多いです。そこでたくさんの景色やイメージをインプットしているという感じです。 その記憶をストックしておいて、長い冬のあいだにアウトプット(制作)するということが多いです。その季節、その場所、そのときに見た新鮮な気持ちのまま描くこともありますが、写真を撮りためるように記憶の中に蓄積させて、一度寝かせて自分の中で消化してから描くことが多いです。

私の中で「一度寝かせて消化する」というのはとても大切な作業です。記憶の中からその「景色」を何回も思い起こすときに生じる、想いや気持ちみたいなものも一緒にのせて「風景」として描き、それを他の人と共有したいと思っています。 どこか特定の場所を描くというよりも、私が見た景色とあなたが見た景色がどこかで共鳴する、そんな具象と抽象のあいだの「風景」を描いていきたいです。

景色の捉え方としては、見たそのときは雄大な美しさに感動するのですが、寝かせて消化させる中でそれをどんどんクローズアップして、一点一点の色をピクセル化、記号化させていきます。そうすると点や線が見えてくる。そもそも自然界は細胞の集まりですから。最近は自身のテーマと作風が上手く作用してきたな、と感じています。

浦佐和子 Sawako Ura ファブリックイメージ

--- テキスタイルデザインのこと

テキスタイルデザインは、大学で本格的に学びました。幼少の頃から絵を描くことが好きで、自分が描いたものをプロダクトに落とし込めるところに魅力を感じ、テキスタイルを選択しました。

大学卒業後、テキスタイルデザインの先端であるフィンランドのAalto大学でさらに学びました。フィンランドは冬が長く、人々が室内のファブリックに様々な美しい色柄を取り入れてその空間で、より穏やかに過ごせるように工夫してきたことが、フィンランドのテキスタイルデザインのレベルを高くした所以です。私自身、日本での大学時代は抽象的な作品を描くことが多かったのですが、フィンランドへ来て、商業をより意識したデザインを学びました。

Aalto大学の卒業制作時に、Marimekkoのテキスタイルデザイナーとして長きにわたって活躍されていた石本藤雄さんと出会い、共に制作する機会を得られたことで、石本さんの色の選び方やデザインの構成を間近で学ぶことができたことも私の作品づくりに生きています。

テキスタイルデザインの面白いところは、自身が描いた絵はA4やB5サイズでもそれを布に落とし込むときには拡大されたり、リピートされたりするので、見え方や伝わってくる感じも少し変わってくるところです。描いた線の太さや、構図全体の遠近感も変わります。カーテンやベッドカバー、テーブルクロスなど大きな面積のものであればデザインの全体像がその中に収まってきますが、クッションカバーやバッグなどに使えば、色柄のどこが見えているかで雰囲気が異なります。その自由度が面白いと思えるようになってきました。 日本からフィンランドへ来てアート色から商業的な「布ありきの絵」の大切さを学び、それを意識しながらもう少し自由に「絵ありきの布」も描けるようになってきたのかもしれません。

マクロとミクロの視点が持てるようになったのは、アート性と商業性を両方学べたことが大きいです。私って、デザイナー?アーティスト?と悩んだ時期もありましたが、テキスタイルデザインでは、その両方を叶えられる気がしています。

フィンランドでは、「デザインとは何か」ということをあまり知らない人であってもたくさんのテキスタイルプロダクトを所有して、それらを季節や気分で取り替えています。使い方もおおらかで、切りっぱなしの布をクリップで簡単に留めてカーテンにしたり、さっと広げてテーブルクロスにしたり。それがテキスタイルデザインの成熟した文化のようにも思えます。
私のデザインしたテキスタイルが様々なプロダクトになり、それを直感的に「いいな。」と思って使ってもらえる、そんなふうになったらとても嬉しいです。

Profile

浦佐和子 Sawako Ura プロフィール写真

浦 佐和子
テキスタイルデザイナー。1986年東京都生まれ。ヘルシンキ在住。

2008年武蔵野美術大学卒業後、フィンランドに拠点を移し、Aalto大学の修士号を取得。その後フリーランスとして、主に自然の美と記憶の中の風景をテーマに制作している。
2010年、HeimTextile(フランクフルト)に出展。同年、Cocca主催のTextile Print Festival 2010にて入賞。
2012年、Marimekko 2012 S/Sコレクションにてデザインを提供。
2014年、東京青山にあるdoinelにて初の個展を開催。
現在は、Marimekko、Samuji、kokkaなどへのデザイン提供など、フリーランスのテキスタイルデザイナーとしてヘルシンキで活動している