Creator’s File vol.43 | 飯泉彩 aya iiizumi

Creator’s File vol.43 飯泉彩 装いにささやかな個性を演出してくれる飯泉彩のアクセサリー。
日常と非日常が共存する美しい世界は、絶妙な配色と素材選びによって描き出されています。

─作家活動のスタート

幼い頃から絵を描いたり、お裁縫をしたり、自分の手でものを作ることが好きでした。両親がミュージカルを観ることが好きだったので、よく連れて行ってもらっていましたね。自分もクラシックバレエを習っていたこともあり、いま思えば子供の頃に目にしたきらきらした衣装やそこに施された刺繍の印象が、私の作品や素材──色とりどりのビーズやスパンコール、刺繍糸などに影響したのかもしれません。

美術大学でテキスタイルを専攻し、卒業後はテキスタイルの会社に勤めました。そこではアパレルの会社に生地を企画提案して卸すことを主とした仕事をしていました。工場とのやり取りやクライアントとの調整など、ただ好きなもの、素敵なものを作るだけではなく、それを売るという一般的な流れを学ぶことができました。いろいろな人たちとコミュニケーションを取る必要もあり、それはとても勉強になりましたね。
美大だと、卒業後すぐに作家活動を始める同級生もいたのですが、それを見ながら自分でもいつかは作家として活動をしたいと思っていたんです。会社員として働くうちにその気持ちがだんだん膨らんできて、3年ほどしてから作家として活動を始めました。

─素材選び

小さなものを作っているので、スパンコールでも2mmとか3mmとかかなり小さいサイズを使うことも多いです。よく見ると同じカラーでも形状が違うんです。一般的に知られている平らな形のものや亀甲のように面取りがしてあって立体感があるもの、表面もマットなものからキラキラと反射するものなど様々なので、組み合わせ次第で豊富なバリエーションができます。ビーズも丸だけではなく棒状のものとか、刺繍糸についても同じで、取る本数を変えたり、同系色でまとめたり、差し色として目立つようにしたり──実際に素材を並べ、合わせてみてしっくりくる組み合わせを見つけていきます。

作家活動を始めた頃は、同じような素材を使う人は少なかったのですが、最近はハンドメイドブームなども手伝って随分と増えてきた印象です。今はその中でどうやって自分の作品を差別化するのかを考えなければいけないと思っています。壊れてしまった時にメンテナンスができることも、作家として個人でやっている強みでもあると思っています。片方落としてしまっても、もう片方を作ったり、金具が緩かったら調整もできますからね。

─インスピレーション

モチーフは限定していなくて、生活の中で気になるものからイメージを膨らませています。ビーズやスパンコールなど、気になる素材を手に入れて、そこからデザインを考えることもありますね。展示会の時などはテーマを決めてそれに合わせてモチーフを考えたり。

今回、スパイラルオンラインストアで販売をする作品も着想や過程は様々です。例えば「tile」は、棒状のビーズの向きによって変わって見える色や光り方が綺麗だと思い、その特徴を上手く生かせるよう縦と横にビーズを配置するデザインに。また、周りは光沢のある糸でスパンコールを縫い付け、シンプルながらも存在感はしっかりあるように仕上げました。

定番の「obane」のシリーズは、もこもこした鳥のお尻の部分と鮮やかな羽をモチーフに、糸とスパンコールの色合わせで華やかに映えるデザインにしています。合わせ方次第でまた違った印象へと展開できるので、今回は新色もあります。それから、春先に雪がとけて、その間から花が芽吹くイメージでつくった「thaw」は、雪解けを表現するため、氷のようにキラッと見えるビーズや光沢のある糸を選びました。

作品の図案はさっと構想を練ってラフスケッチをすることから始まり、素材や色などが徐々に固まってきたタイミングで細部について描き込みます。その際は、同じものを何度でも作れるように、ビーズや糸の色まで詳細に記載します。

─刺繍に魅せられて

細かい作業を少しずつ重ねていくことが好きなので、刺繍をしている時間そのものを楽しんでいます。作品は刺繍の細かな技工を見せるもの、シンプルに素材の良さを生かすものなど様々ですが、どれも時間の積み重ねが見えるので完成したときの喜びがあります。
お客様から「色が綺麗」と言っていただくことが多いのですが、テキスタイルを学んでいた頃から配色を考えることが好きだったので、色を褒めていただくのは嬉しいですね。
今後はオートクチュール刺繍にも挑戦したいと思っていて、現在勉強中です。新しい技術を取り入れることで、今できていない事が可能になるかもしれないですよね。違う技術や素材との組み合わせとか、新しいものを作ってみたいと思っています。スパンコールやビーズも、まだまだ試したことがないものが沢山あるので取り入れてみたいと思っています。

aya iiizumiのアクセサリー

ものづくりを支える私の道具
─ 飯泉彩 京都 三條本家の「みすや針」

京都に旅行をした際に、ガイドブックで見つけて初めてお店に伺いました。 針は長い時間使っていると、指先の汗や油分などで表面のメッキが剥げてザラザラしてしまい、通りが悪くなったり、布が黒く汚れてしまうことがあるんです。私は針を長時間使うので、気になっていて。この「みすや針」はメッキ加工をしていないのでそういったことが無く、また、表面に施された微細な縦筋が針の通りを良くしているんですね。その他にも針先の角度、針穴の工夫など細部まで丁寧な手仕事が施されていて、びっくりするほど使いやすいんです。

制作で欠かせないハサミは、学生時代に旅行で訪れたパリの手芸屋さんで手に入れたものです。 鳥の形のケースに収められ、チェーンで首からかけることもできます。ある時、このハサミを無くしてしまい、ずっと探していたのですが、作家活動を始めようと決心した時に意外な場所から見つかったんです。なにかの力かな?って思えて嬉しくなっちゃって。今も大切に使っています。

Interview:Akemi Kaneko(SPIRAL)
Photo:Heeryeon Lee

Profile

飯泉 彩(いいいずみ あや)

1988年 神奈川県生まれ。
2011年に武蔵野美術大学 造形学部 工芸工業デザイン学科 テキスタイルデザイン専攻を卒業。
テキスタイル会社勤務を経て、2015年に作家活動を開始。

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Instagram ID: ayaiiizumi