Creator’s File vol.39 | Pfütze プフッツェ

Pfutze

─ ものづくりへの探究心で満ちたアトリエへ ─北康孝、賀来綾子による、デザインから製作までを一貫して行なうジュエリーブランドPfütze(プフッツェ)。
シルバーやゴールドを素材にした、端正な佇まいのジュエリーの数々──
アトリエは、その造形美を支える、ものづくりの本質へと迫る飽くなき探究心で満ちています。

─理論と感覚が交差するものづくり

賀来綾子(以下、賀来):基本的に全て二人で行なうのですが、どちらがモチーフを決めたのかによって、少しずつ役割が変わります。モチーフが決まったら、原型を自分で作って、それを北にパスして見てもらって。

北康孝(以下、北):僕はどちらかというと、学生時代に油絵を専攻していたことも影響しているのか、大きなものから削って作っていくタイプですね。彼女は逆に足していくタイプなんです。その性(しょう)が大きな違いですね。原型でも、ある程度まで形を作っておいて、彼女にパスして、それをまた戻してもらって自分で手を加えて──。

賀来:デザインやサイズによりますが、新作だと短くて二週間くらいは掛かりますね。一ヶ月以上の期間をかけて作るものもあります。完成して、やっぱり違った、っていうものもあったり。あとは、ある程度の量産が出来るか、という事も重要ですね。

制作は、実際の植物があって、それを型取りして作り始めるタイプと自然現象がモチーフの型取りの作業が無いものの二種類あって、それによって完成形のサイズや落とし込み方が違ってきます。型取りをするものは、実物の大きさが影響していますね。一方で、自然現象をモチーフにしたものは、そのエッセンスを抽出して、それをどのバランスで見せたら綺麗に見えるか、ということを考えています。

北:自然現象をモチーフにした場合、調べる、というアプローチが先で、植物は採取する、ってアプローチから入ります。例えば、「虹」だったら7色か6色か、という概念から調べ始めて──アメリカでは6色、ロシアでは5色と考えられていて、日本の7色というのは、虹の色層を音階になぞらえて考えたとされるニュートンの影響なんですよね。更に面白いのは、アフリカでは寒色系か暖色系か、というかなりシンプルな区別の仕方をしているんです。自分で色々と調べた結果分かったのは、虹の色は自由という(笑)。
なので、自分たちの虹をモチーフにした作品は4 色にしています。

賀来:北は、かなりコンセプトにこだわるタイプなんです。だから色々と本を調べて、そこからシリーズを考えたりして。私の場合は、身に着けてみてどう見えるか?ということから入るので、北のコンセプトを優先した考え方と、自分の感覚的な部分をお互いに戦わせながらやっているのだと思います。

北:コンセプトをしっかりと考えることで、より作品が強化される、というか。
実際に身に着けてみて、そこから「虹の色」に意識が向いて──なぜこれは4色なのか?と思ってもらった時に、僕の研究成果が発揮されますね。そうしたら、もう、すごく説明しちゃいます!

賀来:時間をかけたから良いものができるという事でもないと思いますが、モチーフに対して色々と調べて、相談をして、二人で消化した結果が形になるのは、ものづくりとして良い形なのでは、と思います。

─ブランドと共に時を重ねるカタログ

北:アトリエの近くには大きな印刷会社がいくつかあって、その周辺に箔押しや製本の工場が集まっているので、名刺を刷ったり、箱を作ったり、この辺りで全部できちゃいます。
プフッツェの取扱店用のカタログも、そういった利点を活かしながら、撮影からレイアウト、印刷と製本まで全て自分たちで手作りしているんです。製本は二人で習いに行きました。

賀来:新作が加わったり、価格が変わったり、修正がすごくあるので、いまの方法に落ち着いたというのがありますね。1シーズンで終わるコレクションはカタログも一回限りですけれど、私たちの場合はずっと作り続けているシリーズが多いので、全部が見られないと意味がないんです。

北:以前、ホッチキス留めのカタログを印刷屋さんで作ったのですが、値段の変更などでどんどん修正のシールが貼られていって、結局捨てるしかなくなってしまったのですが──それをなんとかできないか、と思ったのが始まりですね。
改定がある時は、これまでのカタログの背を切って全部ばらばらにして、ページを差し替えて、もう一回綴ります。

賀来:なので、このカタログは毎年回収します。変わらないページはそのまま使って、追加や修正があるページだけ部分的に差し替えて。
毎年一回、新しく綴じたものを納品して、代わりに前のものを戻してもらいます。

北:その年毎に表紙の布を変えることも出来るし、カタログを捨てる必要も無いし。いまは始めた頃の倍くらいのページ数になっていて──僕の製本の技術もどんどん向上しているんですよ(笑)。

賀来:必要に迫られて作った、という理由が大きかったのですが──こうして作ったカタログの方が、クリアファイルで綴じられたものよりも、「観る」という感覚で向き合ってもらえている感じがします。

─やらないで諦めるよりは、やってみてだめだった、って確かめる

賀来:私たちは二人ともジュエリーを作る教育は受けていません。私は美大でデザインを学んでいて、二人とも結婚してからジュエリーを作り始めました。北の母が彫金をしていたので、その影響もありますね。そして、私はジュエリーを着けることも好きだったので、作っていて楽しいな、という思いで。自分の身に着けるものを作りたい、という気持ちがきっかけでしたね。やっているうちに、どうせなら仕事にできないかな、と思うようになって、ブランドを始めたんです。

北:僕も、美大では油絵科で学んでいましたし。でも、立体を作っていたので、素材が変わっただけという感覚があります。ジュエリー作りをはじめて、これも何かしらの表現ができる、って思って、そこから一気にのめり込んでいきました。

北:美大の時は、自分もそれなりの美術の知識を持っているという自負があったので、人の言うことをあまり聞けなかったです。

でも、ジュエリー作りについては、自分の知識がゼロだったので、逆に全ての情報に対して心が開かれているというか──分からないことがあった時、地金の色を作ってくれる工場とかに直接聞きに行きます。錬金術の歴史に及ぶような壮大な話も含め、知らないことばかりで、素直に聞くことができたんですね。それも面白かったですね。

賀来:ブランドのモチーフを植物や自然現象にしたのも、当初、それぞれが作っている作品を持ち寄ってみたら、北は蜂の巣をモチーフにしたもので、私は植物をモチーフにしたものを作っていて──合わせると両方とも自然物だね、って話をしていて。お互いに相談せずに作ったものが共通していたので。それから、だんだんと自然現象の様な目には見えないものにも広がっていきました。

北:「惑星」とか「影」とか「虹」とかね。最初の頃はより直接的でした。「枝」とか「木の葉」とか。

賀来:私たちは、石は使わず、地金だけでジュエリーを作っているので、その分、地金の造形や質感だけで面白くしたいと思っていて。地金って、シルバーとかゴールドとか、私たちにとってはモノクロのようなイメージ。色が入っていないというか、鉛筆デッサンのような。どんな色の服を着ても合わせやすいというイメージがあって。ある程度デザインが奇抜なものでも、日常の生活で身に着けることができるんじゃないかなって。それに、若い方も年配の方も普段着けるジュエリーとして使いやすいのではないか、という考えはありましたね。

北:カタログの話もそうですけれど、僕たちは割と動きながら考えるタイプですね。どうやって出来ているかを知りたいし、それが分かれば応用ができますよね。まず、やってみて考えたい、という気持ちが強いのだと思います。やらないで諦めるよりは、やってみてだめだった、って確かめるほうが二人の性格には合っているのだと思います。

プフッツェのジュエリー

ものづくりを支える私の道具
─ プフッツェ 「科学のアルバム」

僕が子供のころに両親に買ってもらった 〈あかね書房〉という子供の本を専門に出版している会社の「科学のアルバム」という図鑑です。植物や生き物、惑星など、分類によってカバーが色分けされています。
新作のイメージが浮かんだ時に、本棚から関連のものを探して調べます。
この図鑑は、その道の第一人者のような方々によって、子供が読むためのものとして執筆されているので、専門的な事もとても分かりやすくまとめられているんです。
いきなり分厚い専門書を読んでも分からないので、この本はモチーフに対する取っ掛かりとして、そのものの概要を知る──入り口を掴むための役割として大活躍しています。

Interview:Akemi Kaneko (SPIRAL)
Photo:Lee heeryeon

Profile

Pfütze(プフッツェ)

北康孝、賀来綾子の2人でデザインから製作までを行なっているジュエリーブランド。
北は多摩美術大学、賀来は東京造形大学卒業。その後2007年からPfützeとして活動をはじめる。

Pfütze(プフッツェ)はドイツ語で水たまりという意味。

シルバーやゴールドを素材としたジュエリーは全て自然物・現象をモチーフとしています。
新鮮な驚きやおもしろさとともに、うつくしいと感じるもの、身につける楽しさを感じられるものをつくっていきたいと考えています。

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