Creator’s File vol.40 | 藤本 咲 Saki Fujimoto

藤本 咲 ─ 色で伝えられることを探して ─水彩画のように柔らかな色彩が印象的なガラス作家 藤本咲。
美しい色の背景には、日々の生活で出会った言葉、音楽、匂いなど、目には見えないものの存在があるそうです。

─ずっと心に残っていたイタリアの記憶

両親が、テキスタイルデザイナーとカメラマンだったので、子供の頃から美術に関わることが多かったと思います。美術大学への進学も自然な流れだったのですが、進路を考えている、ちょうどその頃に吹きガラスの映像を観たのですが、3歳の時に9ヶ月くらい住んでいたイタリアで目にしたヴェネチアンガラスの記憶を思い出しました。
ヴェネチアンガラスを初めて観た時の、その衝撃がずっと心の中に残っていたんですね。母からは「一生できることをやりなさい」とアドバイスを貰っていたこともあり、子供の頃から好きだったガラスの道に進んでみようと決めました。

私は、いい意味でも悪い意味でも、一度決めたことから変えられない性格なので、それからはずっとガラスに関わる仕事をしようと思っていました。東京の美術大学で学んだあと、より密にガラスと向き合える環境に身を置きたいと思い、富山のガラス専門学校に進学しました。その頃には、ガラス作家として生きていきたいという強い思いがありましたね。

私が使っている「キルンワーク」という技法は、作るものによって方法に違いはありますが、ベースになる板ガラスの上に、パウダー状の色ガラスを乗せて、上からクリアな板ガラスで挟んで窯に入れ、一枚の色ガラスを作ります。こうして作った板ガラスをカットして、パーツごとに熱を加えて接着することで形を作っています。
ガラスの所々に気泡が見えるのは、色を出すガラスの粉の粒度によって、粒と粒の間に閉じ込められた空気が泡になって見えるためです。
吹きガラス等では、表面に気泡がないように作るのですが、泡のあるガラスの表情も綺麗だな、と思っています。

色ガラスは、熱を加える前は粉状のため、乳白色っぽく見えるので、仕上がりの鮮やかな発色は実際に作ってみて分かることもあります。
それに、金属の化学反応で色を出しているので、水彩絵の具のように綺麗に色が混ざるわけではなく、黒く濁ってしまう場合もあるので、テストピースを作って確認しています。
色がいっぱいあると、制作の時にそこから選ぶ楽しさがあって「これを作るから、この色を作る」のではなく「この色があるから、これを作ってみる」という感じです。
時間があるときは色ガラスを作っています。

─ガラスの可能性

ガラスという素材は、当たり前ですが、落としたりすると割れてしまうので、そこが理由で買うのを躊躇したり、避けてしまうお客様もいらっしゃるんですね。
また、イメージとしては繊細なのに、素材自体の強度の問題で実際には華奢なデザインができない事もあるので、難しいなって思います。

一方で、ガラスは物語性が出せるというか、私が思い描いている世界を一番伝えやすい素材だと思っています。
例えば、絵画作品を観た時、これをガラスにしたら魅力的かもしれないと思うことがあるんです。
実際にそれができるかはまだ分かりませんが、ガラスの素材の面白さは、まだ他のものに比べて認知されていない印象もあるので、もっと伝えられるように活動を通してご紹介したいと思っています。
未知だからこそ、もっと魅力を引き出せるかなって思うんです。

今回、Spiral Online Storeで販売するラインのシリーズは、そういった課題──ガラスの重たい感じをどうしたら、軽やかに見せられるか?というのと、自分はドローイングなど線で描かれているものに興味があって、それをガラスに置き換えるにはどうしたらいいか?と考えたことから作り始めたシリーズです。
ドローイングの線のよく見ると均一では無いところも魅力だったりするので、グラデーションなどで、ぼやっとした表情を出せたらいいな、と思って作っています。
活動の初期から作っていたシリーズですが、今はどのくらいまでガラスを細くできるかというテーマで華奢にしすぎると映えなくもなるので、色の濃さを変えたり、少しずつ変更を重ねています。

自分の作品はなるべく使うようにして、気付いたことは後で改善しています。自分で使うと、お客様に説明するときにいろいろな提案ができますからね。

─目に見えない匂いや音、言葉を見える形に

色で伝えられること、があるのではないか?という制作の大きなテーマがあるので、心地良いと思う色の組み合わせは常日頃から考えるようにしています。

ある作家のエッセイに「目に見えないものを目に見えるように表現することが、私の仕事」という主旨のことが書いてあったのですが、私の仕事もそうだな、って思いました。言葉とか、音楽とか匂いとかそういうものを感じた時に、頭に残る印象があって、それが自分の作品の色に繋がっていきます。
だから、日頃からいろいろな言葉や感覚を自分の中にストックするようにしています。気になったものは、メモに残したりもします。すぐに使うというよりは、何か新しいことをする時に、過去のアイディアを思い返してアイディアソースとして使うことが多いですね。自分の体内で少し溜めておいて、ゆっくりと時間をかけて外に出す感じです。

今後はアイテムのバリエーションを増やしたいと思っています。そうすることによって、自分の作品を観てくれる人が広がると思うので。今の技術を応用して、新しいアイテムを増やしていきたいですね。

藤本 咲 ガラスのアクセサリー

ものづくりを支える私の道具
─ 藤本咲 「詩や短歌の本と画集」

詩や短歌などをよく読むのですが、子供の頃を思い返すと小学校の国語の授業で一番楽しかったのが、短歌や俳句を鑑賞する時間でした。今は現代詩を中心に読んでいます。言葉がすっと入ってくるので。
自分の作品は「言葉」からの影響が大きいので、気になった言葉はメモして残しておくこともあります。また、小説よりもエッセイの方が好きですね。その人が考えていることが直に伝わってくるので。

あとは、知人に私の作品のラインが似ていると言われて、手にとった画集です。言葉にはうまくできないのですが、惹かれるものがあるな、と思ってたまに眺めています。

Interview:Akemi Kaneko (SPIRAL)
Photo:Heeryeon Lee

Profile

藤本咲(ふじもとさき)

1988年 東京生まれ
2010年 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 卒業
2011年 富山ガラス造形研究所 研究科 入学
2013年 富山ガラス造形研究所 研究科 卒業
現在、硝子企画舎のアソシエイツとして活動中

Instagram ID: sakifujimoto0122