Creator’s File vol. 41|金子澄恵 sumikaneko
金子澄恵
糸のように細いチェーンを編み、まるで織物のような柔らかな雰囲気を持つデザインや、
自然の造形美を想起させるジュエリーを制作している金子澄恵。
sumikanekoのジュエリーには、細部にまで及ぶ丁寧な手仕事と、
身につける人が長く愛用できるエターナルな魅力がつまっています。
─初めてのセレクトショップでの取り扱い
もともと別の仕事をしていたのですが、コツコツとひとりでやる仕事の方が自分には合っているのではないかと思い、今から25年くらい前ですね、彫金の学校に基礎を学ぶために1年ほど通いました。
その後、渡英し、3年ほどジュエリー制作を続けていたのですが、そこで偶然、以前から知っていたバイヤーさんに再会し、日本のセレクトショップでお取り扱いをいただく機会に恵まれました。
アクセサリーだけで仕事をしていきたいけれど、どうしたらいいか、と思っていた時に声をかけて頂いたので、ブランド名もなくて、心の準備も十分にはできていない状態でのスタートでした。
初めてオーダーをいただいた商品は日本で販売されていたので、ロンドンに住んでいた私は直接お客様の反応は分からなかったのですが、すぐにリ・オーダーをいただいたので、間接的にですが反応が良いことは分かりました。お蔭で、自分のジュエリーに少し自信が持てたというのはありましたね。
海外でのものづくりは工場を探すこともなかなか難しく、生産背景も含めてもっとしっかりとやりたいと思ったので、1年ほどしてから拠点を日本にするため帰国をしました。
─自分なりのクラフトマンシップ
昔は今よりも無骨なイメージの、少し未完成さが残っているようなものを作っていました。それはそれでいいのですが、シルバーの価格が上がり、ボリューム的な制限が出たこともあって、もうちょっと完成度の高いものを作りたいという思いがありました。
手が込んだデザインなど、自分なりのクラフトマンシップを出しつつ、制限のある中で個性を出したいと考えていました。あまり細かな仕事を施してしまうと量産の時に上手くいかないこともあるのでバランスを見ながらですね。
私の定番のシリーズに細いチェーンを編んだデザインがあるのですが、独学で試行錯誤してようやく今の技法になりました。趣味で編み物をしていた時に、ふと、こういうメタルにはないテクスチャーが出せると良いかもしれないと思ったんです。チェーンにチェーンを編み込むデザインは他には無いですし、編み方によってはファブリックのような優しい表情が出せると思って作ったのが始まりです。
今はブランドをスタートした当時より女性らしい作りになりましたが、やはりキュートなタイプというよりは、ユニセックスに近いデザインが多いと思っています。ボリュームは変わってもスタイルは変わっていないと思っています。
─素材もデザインとしてもエターナルなものを
普通に生活に寄り添うもので、みんなが身につけやすい──これは、ブランドをスタートしたときから変わらない考え方です。高価で身につける人を選んでしまうものよりも、みんなが安心して気軽に使えるものを作っていきたいと思います。
シルバーは、ゴールドと比べると価格が手頃なので色々なデザインが楽しめますし、買うかたもお求めやすいですよね。色味のクールな印象も私の作る、ユニセックスな雰囲気のデザインにも合っていますし、カジュアルにもお出かけの際にも使えるというのが魅力ですね。
それと、長く身につけていただきたいという思いがあります。エイジレスなデザインであることを考えながら制作しています。買ってすぐに飽きてしまうものは嫌なので、素材としてもデザインとしてもエターナルなものがいいですね。
─人間には作り出せないような形、そういうものに近いものを作りたい。
サーフィンをしているので、週1、2回くらいのペースで海に行っています。早朝に海に行って、それから仕事をします。波を待っている間とか、ぼーっとしている時にインスピレーションを得ることもありますね。太陽の光が乱反射している様子とか、そういうものを掴んでいけたらいいなと。
自然を見ていると、とても人間には作り出せないような、計算し尽くされているようで、していないような形──波や花、果物の断面などをいつもどきどきしながら見ています。私たちが作れるものではないですが、そういうものに近いものを作りたいとも思っています。
sumikanekoのアクセサリー
ものづくりを支える私の道具
─ 金子澄恵 「制作に欠かせない、3種類の道具」
これらは制作で一番大事なものです。
どれも長く使っているので、手に馴染んでいます。
このかぎ針は0.1ミリのレース編み用のものですね。先端の塗装が剥げたりはしますが、折れたりすることはなく、ずっとこの一本を長く使っていますね。
やはり慣れた道具が使いやすいので、新しいのに変えてしまうとまたちょっと違う、変な感じなんですよね。
3つの丸フライヤー、ビーズを通す糸代わりに使うカラゲセンも制作には無くてはならない道具です。
Interview:Akemi Kaneko(SPIRAL)
Photo:Heeryeon Lee
Profile
金子澄恵(かねこすみえ)
東京都生まれ。
1997年に自身のジュエリーブランド「xanadu」を立ち上げ、2008年にブランド名を現在の「sumikaneko」に変更。
国内外のセレクトショップに商品を展開、スパイラルマーケットでも定番の商品として人気を集める。
URL http://www.sumikaneko.com
Instagram ID: sumikaneko_jewellery