「味わう時間」一、温かい飲みものを味わう|https://store.spiral.co.jp/
温かい飲みものを味わう

味わう時間

一、温かい飲みものを味わう

橙に染まり始めた葉の隙間からこぼれる陽射しや
ゆるやかな川のように静かに時が流れ、物思う夜。
そこかしこに、短く美しい季節の訪れを感じます。
滋味豊かなこの季節を、温かな飲みものをおともにじっくり味わってみませんか。
淹れたての芳しいお茶がのどをすべり落ち
体の真ん中に灯りがともるような、じんわりとした心地良さを噛みしめて。
温かな飲みもので、今年の秋を特別な日々に。

味わう時間コンセプトイメージ
味わう時間コンセプトイメージ
味わう時間コンセプトイメージ
COLUMN
温かい飲みもので、
心は旅をする
2021.10.15
温かい飲みもので、心は旅をする

寝起きの自分の頬の冷たさや、日暮れの澄み切った空に、秋の訪れを実感します。
涼しく心地よい気温に日ごとに長くなる夜。温かい飲みものが一番美味しく感じる季節です。
無性にどこか遠くへ行きたい気持ちに駆られても、叶わぬ今のこの世界で、日常の中で自分の心がふっと沸き立つような、
どこか別の扉へと繋がる瞬間を意図的に生み出すことは、とても大切な気がします。

温かい飲みものを通して訪れる小さな喜びや驚きが、日々に小さな風穴をあけ、
今日一日を特別な日に変えていく様子を記しました。

温かい飲みもので、心は旅をする

-5:10-

何かいい夢をみていたのだろうか、なんとなく嬉しい気持ちで目が覚め、枕元の時計を見て驚いた。
空は濃紺のグラデーションで、裾のほうがうっすらと橙に染まり始めている。
こんな時間に目が覚めるなんてめったにない。
布団をぬけだして、キッチンでミルクティーを淹れる。
小鍋でしっかり煮出した、火傷しそうなぐらい熱く濃厚なミルクティーをカップに注ぎ、
小さなクッキーをお皿にのせて。

温かい飲みもので、心は旅をする

▴ 辰野しずか/
mg&gk フィナンシェと紅茶の器 セット

夜明け前の部屋は少し肌寒く、両手でカップを包むようにして熱々のミルクティーをすする。
ツンとした早朝の空気を味わいたく、窓を大きく開けて刻々と移り変わってゆく空を眺めながら
少しずつミルクティーを飲んでいたら、またゆるやかな眠気が近づいてきた。
美しい一日の始まりを横目に布団にもぐりこむ。

温かい飲みもので、心は旅をする

▴ 南景製陶園/
コーヒー サーバー・ドリッパー 黒練

-10:45-

パッと目覚めると、朝と呼ぶには気が引ける時間だったけれど、
早朝に美しい空を見た喜びがまだふつふつと残っていて、勢いよく体を起こす。

温かい飲みもので、心は旅をする
温かい飲みもので、心は旅をする

お湯を沸かしている間にコーヒー豆を挽く。ぽこぽこと耳に心地よい音に、
挽きたての豆の芳しい香りが広がって、毎朝の習慣なのに、こんなにも幸福に感じるのは不思議。
マットな黒い土と、輝く真鍮台の組み合わせが気に入っているコーヒーサーバーで淹れる。
使うたびに味わい深く育っていく様子が嬉しい。

温かい飲みもので、心は旅をする

▴ moderato/
カップ&ソーサー

カップになみなみ注いで、アップルパイをお皿にのせる。
朝だからちゃんとした朝食を食べないといけないなんて、そんな決まりはない。
休日に最初に口にするものは自分の心躍るものが一番だ。 そうだ、今日はそんな瞬間をいくつも作ってやるぞ、と小さな決心する。

温かい飲みもので、心は旅をする

▴ 南景製陶園/
急須 Sencha150

-16:00-

秋の素晴らしい陽気につられて散歩する。本屋に寄って浮かれた心の赴くまま何冊も購入し帰宅。沢山歩いたので少し疲れた。
淹れたてのしみじみと美味しいお茶で癒されたくなって、最近購入したばかりの急須を出す。
ティーバックの手軽さも好きだけれど、時間をかけて丁寧にお茶を淹れてみたいなと思っていた時に出会った南景製陶園の急須。
急須にはとても珍しい、シャープでスタイリッシュなシルエットと、柔らかで淡いグレーベージュの土の質感の対比にグッときて購入した。
ホームページに載っていた、おいしいお茶の淹れ方を参考に淹れてみる。

温かい飲みもので、心は旅をする

まずは湯呑みに沸かしたお湯をいれる。3分ほど待ち、煎茶を淹れるのに最適な70度まで冷ます。

温かい飲みもので、心は旅をする

茶葉をはかって急須に入れる。
湯呑にいれたお湯を急須に注ぎ、蓋をして1分蒸らす。
急須をゆっくりと傾けて、最後の一滴まで注ぎ切る。

温かい飲みもので、心は旅をする
温かい飲みもので、心は旅をする

部屋中に煎茶の爽やかな香りが広がって、息を吸い込む。
丁寧に淹れたお茶は、驚くほど風味豊か。
喉をゆるやかに通りながら体に沁み渡っていく温かい感覚が心地良い。
淡いグレーの釉薬に映える、目にも鮮やかな緑を愉しみながら小さな湯呑みで大事に味わった。

温かい飲みもので、心は旅をする

▴ 南景製陶園/
ソギポット 墨貫入

-23:00-

時間を気にせず湯船に浸かって、映画を観ていたらあっという間に夜が更けた。
とても良い一日だったから、このまま眠って終えるにはなんとなくもったいない気がして、とりあえずお湯を沸かす。
丸いころんとしたフォルムに手のひらにのるぐらいの小ぶりなサイズ、華奢な取っ手や、全体に入った美しい貫入模様に、
見た瞬間に心を掴まれて即決した大切なポット。 一日の締めくくりのおともにぴったりだ。

温かい飲みもので、心は旅をする
温かい飲みもので、心は旅をする

ほうじ茶の茶葉をいれてお湯を注げば、ふわっと立ちのぼる、甘く香ばしい馴染みの香り。
今日はそこに、温めた牛乳を注ぐ。濃い茶色に乳白色が混じりあい、一瞬入道雲のようにぐわっとゆらいで、
次の瞬間には淡いベージュに。

温かい飲みもので、心は旅をする
温かい飲みもので、心は旅をする

▴ moderato/
ハイカップ&ソーサー

満を持して登場するのは、一粒一粒が宝石のようなチョコ。
少しずつ大事にかじりながら、ほうじ茶ミルクをすすり、今日買ったばかりの本を開く。

温かい飲みもので、心は旅をする

▴ 南景製陶園/
碗 円柱

旅先で「ああ、昨日の今ごろは仕事をしていたな」とふと思ったときに、
そうだ、自分次第でどんな日にも出来るんだ!と急に力が湧いてくることがあります。
わたしはそれを味わうために旅行しているのでは?と思うぐらい強烈で幸福なパワーです。
しかし旅に出られない今、そんな力を味わうのはなかなか難しく、世界の大きな流れに飲みこまれて、
世の中の時間軸の中で生きているような感覚があります。
そんな時、朝からアップルパイを食べたり、一日の中で何度も茶器を替えて好きな飲みものを淹れたり、
常識なんて気にせずささやかだけれど破天荒な時間を楽しんでみる。
そうして日常に小さな風穴があいたら、自分だけの時間軸が、人生の輪郭が、くっきりと見えてくるような気がします。

心の旅なら、一日に何度でも、どこへでもいっていいのです。
温かい飲みものといっしょに、軽やかな心で今年の秋を味わってみてください。